妊娠中にビタミンAを過剰摂取すると、胎児の奇形など先天異常のリスクが高まると言われていますが、ビタミンAを含む人参は、妊婦でも食べられるのでしょうか?
もし、妊婦が人参を食べ過ぎてしまった場合には、ビタミンAを過剰摂取したことになるのかどうかを解説していきます。
また、妊娠中に人参を食べる時の注意点なども合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
妊婦が人参を食べ過ぎるとビタミンAの過剰摂取になる?
人参のビタミンAについて
ビタミンAには、動物性食品に多く含まれるレチノールと、植物性食品に多く含まれるβカロテンというものがあります。
緑黄色野菜である人参はビタミンA(βカロテン)を多く含んでいて、特に皮の部分にβカロテンが豊富に含まれています。
強い抗酸化作用を持っていて、様々な健康への働きが期待できるβカロテンは、体内で必要な量だけビタミンAに変換され作用します。
βカロテンのように、体の中でビタミンAに変換される物質は、プロビタミンA(ビタミンAの前駆体)と呼ばれています。
人参の食べ過ぎと胎児奇形の関係
よく「妊娠初期の妊婦がビタミンAを過剰摂取すると、胎児に奇形などの先天異常が起こる可能性がある」と言われていますが、実はビタミンAの中でも、妊娠初期の過剰摂取が問題となるのはレチノールだけです。
先ほど言ったとおり、βカロテンは体内で必要な量だけビタミンAに変換され、残りの分はそのまま蓄積されるか排泄されるので、ビタミンAの過剰摂取になることはないのです。
つまり、妊娠初期の妊婦さんが過剰摂取に気をつけるべきビタミンAは、動物性食品に多く含まれるレチノールであり、人参などの緑黄色野菜から摂れるβカロテンについては気にする必要はないのです。
人参の他にもβカロテンを多く含む食材には、西洋かぼちゃや春菊、ほうれん草、小松菜などがあります。
妊娠中に人参を食べ過ぎたからといって、それが原因でお腹の赤ちゃんに奇形などの先天異常が起こることはないと言われています。
妊婦が人参を食べることで摂れる栄養素
ビタミンA(βカロテン)
ビタミンAは、骨や皮膚や粘膜の保護や、肝臓機能を正常に保持、視力低下の予防といった働きを持っています。また、免疫力を高める働きもあります。
ビタミンAが不足することで、皮膚がかさかさに荒れたり、暗くなると見えなくなる夜盲(やもう)症(とり目)などの症状が起こる可能性があるのです。
妊娠初期にビタミンAを過剰摂取すると、胎児の先天異常のリスクが高まることが報告されていますが、人参に含まれるビタミンAはβカロテンであるため、妊娠初期のビタミンAは人参などの緑黄色野菜から積極的に摂るようにしましょう。
カリウム
人参にはカリウムも含まれていますが、カリウムにはナトリウムを排出する作用があり、塩分の摂り過ぎを調節する働きがあります。
それによって、むくみの解消や予防にも期待できます。また、カリウムには血圧を抑える効果があるため、高血圧の予防にも役立つと言われています。
妊娠中のむくみに悩む妊婦さんは少なくありません。むくみ改善のためにも人参は積極的に食べるといいでしょう。
食物繊維
人参には食物繊維が含まれているので、腸の働きを活発化させ、便通を良くする作用があります。つまり、便秘解消と整腸作用に期待できるのです。
妊娠するとプロゲステロンの分泌が盛んになりますが、このホルモンは腸のぜん動運動を抑える作用があるため、妊娠中は便秘になりがちです。
便秘によって便が固くなると、痔を引き起こす原因にもなります。また、痔が原因で産後に便秘になることも考えられます。
そうならないためにも、妊娠中から食物繊維を含む人参などの食材をバランス良く食べるように心がけておきましょう。
妊婦が人参を食べる時の注意点
妊婦さんが人参を食べても、赤ちゃんや妊娠経過に悪い影響がないことは分かりましたが、人参を食べ過ぎることで「柑皮症(かんぴしょう)」になる可能性があります。
柑皮症とは、βカロテンなどのカロテノイド色素の過剰摂取により、皮膚が黄色くなることをいいます。
「みかんを食べ過ぎると手が黄色くなる」と聞いたことがある方も多いはず。特に、手のひらや足の裏、鼻などが黄色くなりやすいとされています。
人参やみかん、カボチャなどカロテノイド色素が多い食物の過剰摂取を止めることで、自然に治るので、特に治療の必要はありません。
妊婦は人参を積極的に食べましょう
人参にはビタミンAが多く含まれているので、妊娠中に食べると赤ちゃんに奇形など先天異常が現れるのではないかと心配する妊婦さんもいますが、その心配はいりません。
なぜなら、人参に含まれるビタミンAは、βカロテンというもので、妊婦さんが食べたとしても赤ちゃんに影響を与えることはない物質だからです。
人参には、カリウムや食物繊維なども含まれているため、妊娠中でも積極的に食べるようにしましょう。
人参は、カレーや肉じゃがなど人気料理にもよく登場する食材ですが、皮ごと煮たり炒めたりする調理法だと、栄養の吸収率が良くなるので良かったら試してみてくださいね。