食事の味付けや調理の際に、上白糖の代わりに「てんさい糖」を使っている家庭も多いはず。でも、赤ちゃんの離乳食にてんさい糖を使ってもいいのでしょうか?
赤ちゃんの食べ物にてんさい糖を使ってもいいのか、危険性はないか、など気になることはたくさんありますよね。この記事では、その疑問についてまとめました。
この記事でわかること
- てんさい糖とボツリヌス菌の関係性
- 乳児ボツリヌス症について
- 赤ちゃんにてんさい糖はいつからあげられるか
- てんさい糖と他の砂糖との違い
- てんさい糖のメリットとデメリット
てんさい糖を赤ちゃんにあげていい?ボツリヌス菌の可能性は?
結論から言うと、赤ちゃんにてんさい糖が含まれた食べ物をあげても大丈夫です。ネット上には様々な情報があり、何が正しくて本当なのかわからなくなりますよね。
ネット上で「てんさい糖は赤ちゃんにあげないほうかいい」と言われている理由のひとつに、ボツリヌス菌が関係しています。
そこで、てんさい糖とボツリヌス菌の関係性について調査してみました。
ボツリヌス菌とは
「はちみつはボツリヌス菌を含んでいる可能性があるから、赤ちゃんにあげてはいけない」と聞いたことがある方も多いはず。
ボツリヌス菌とは、土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布し、動物の腸管などにも生存する菌のことです。
ボツリヌス菌は熱に強く、酸素の少ない状態に置かれると毒素(ボツリヌストキシン)を産み出します。
この毒素を含む食品を摂取することによって起こる全身の神経麻痺を生じる神経中毒疾患のことをボツリヌス症といい、1歳未満の乳児にみられるボツリヌス症を「乳児ボツリヌス症」と言います。
生後1歳未満の赤ちゃんの腸内環境は大人と異なり、腸管内でのボツリヌス菌の定着と増殖が起こりやすいとされ、最悪の場合は死に至ることもあります。
主な原因食品は、はちみつ以外にも黒糖やコーンシロップ、自家製野菜ジュース、井戸水などが挙げられます。
てんさい糖とボツリヌス菌
赤ちゃんにとってボツリヌス菌を含む食品が危険だということがわかりましたが、てんさい糖とボツリヌス菌に関係性はあるのでしょうか?
てんさい糖の販売元として有名な「ホクレン」のホームページには、てんさい糖とボツリヌス菌について以下のように記述されています。
ボツリヌス菌は熱に強い芽胞を形成するため、一般的に120℃、4分間(あるいは100℃、6時間)以上の加熱をしなければ完全に死滅しないとされております。
弊会製品はその製造工程において、120℃、4分以上の加熱工程を有しており、この温度指標を遵守し製造しております。
\ホクレンのてんさい糖/
実際に、てんさい糖からボツリヌス症を発症したという症例は日本にはありません。
そして、前例がないことも含め、厚生労働省食品衛生課では乳児ボツリヌス症において、てんさい糖の規制は設けられていません。
つまり、てんさい糖を製造する過程でボツリヌス菌が死滅する加熱工程があるため、心配いらないというわけです。
スーパーやドラッグストアなどで購入できるベビーフードにも、てんさい糖が含まれているものもあります。
しかしながら、赤ちゃんにてんさい糖をあげ始める時期や量には注意が必要しましょう。
てんさい糖は赤ちゃんにいつから与えていい?離乳食には?
赤ちゃんにてんさい糖をあげ始める時期は、ボツリヌス菌の可能性に関わらず砂糖であるため、早くからあげすぎるのは健康のためにもあまりよくありません。
一般的に離乳食に味付けとして調味料を使い始めるのは、生後9〜11ヶ月の離乳食後期からとされています。離乳食後期であっても、調味料はごく少量にとどめましょう。
離乳食に砂糖を加える場合は、1回の離乳食につき3g(砂糖小さじ1程度)まで使えます。糖分の摂りすぎを防ぐためにも、食材の甘みを生かした調理を心がけましょう。
また、砂糖を使いすぎると、その強い甘みによって味覚形成が邪魔され、味覚に影響を与える可能性も考えられます。
てんさい糖のメリットとデメリット
赤ちゃんにてんさい糖をあげてもいいことがわかりましたが、てんさい糖には他の砂糖と比べて、良いことや悪いことがあるのかも気になりますよね。
そこでてんさい糖の成分などについても調べてみました。
そもそもてんさい糖ってなに?
てんさい糖の原料は、甜菜(てんさい)という作物で、北海道を代表する農畜産物の一つ。甜菜の生産地は日本では北海道だけです。
上白糖やグラニュー糖との大きな違いは、見た目が茶色いことと天然のオリゴ糖が含まれていること、まろやかな甘さがあり風味やコクがあることなどが挙げられます。
オリゴ糖とは糖質のひとつで、善玉菌のビフィズス菌を増やし、お腹の調子を良好にする効果などに期待できます。
てんさい糖と上白糖の成分の違い
(100gあたり)
栄養成分 | てんさい糖 | 上白糖 |
---|---|---|
カロリー | 390kcal | 384kcal |
タンパク質 | 0.5g | 0g |
炭水化物 | 97.5g | 99.2g |
ナトリウム | 15〜80mg | 1mg |
カルシウム | 0〜2mg | 1mg |
マグネシウム | 0〜0.3mg | 0mg |
リン | 0〜6mg | 0mg |
鉄 | 0〜0.2mg | 0mg |
亜鉛 | 0〜0.1mg | 0mg |
オリゴ糖 | 5g | 0g |
てんさい糖のメリットと効果
てんさい糖のメリットと言われる効果には、以下のことがあげられます。
- ビフィズス菌を増やす
- 便秘解消
- 免疫力向上
- アトピー性皮膚炎改善
てんさい糖のデメリットや害
他の砂糖と比べてメリットの多いてんさい糖ですが、一方で「害がある」と言われるデメリットも存在します。害があると言われる原因は以下の2つです。
- 甜菜の栽培に農薬が使われることが多い
- 甜菜が遺伝子組み換えの場合がある
甜菜とはてんさい糖の原料となる作物ですが、甜菜に限らず私達が普段から口にしている食品の多くに農薬が使用されています。また、遺伝子組み換え食品もスーパーなどにたくさん並んでいます。
実際に、日本で栽培される甜菜には、害虫予防のために農薬が使用されている場合が多いようです。
しかし、甜菜の遺伝子組み換えについては日本では遺伝子組み換えされた甜菜の商用栽培が認められていません。遺伝子組み換えについては国産を選べば問題ありません。
農薬使用についてデメリットと捉えるかは、その家庭それぞれなので気になるようであれば、赤ちゃんに使用するのは控えたほうがいいでしょう。
てんさい糖は赤ちゃんにあげてOKだけど、時期と量には注意
てんさい糖入りの食べ物を赤ちゃんにあげても大丈夫ですが、あげ始める時期と量には注意が必要です。
基本的に、赤ちゃんの食べ物に味付けとして調味料を加えていいとされる時期は、生後9〜11ヶ月の離乳食後期からです。
もし離乳食の味付けとして、てんさい糖を加えるとしても、1回の離乳食につき3gまでにしておきましょう。
ちなみに、市販されているベビーフードにもてんさい糖が入っていることもあり、過去にてんさい糖によるボツリヌス症の症例もないため、ボツリヌス菌については心配いらなそうです。